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『七月の蜻蛉』。

Photo_2 尾崎潤子さんの『七月の蜻蛉』(六花書林)。

 尾崎さんは、「棧橋」の仲間。もともと歌の巧い人である。

 こうして、人生の一部を切り取った作品を読んでみると、ああ、人の人生での時間というものは一瞬一瞬が尊いものなのだなあと、改めて思う。

 こんな歌がよかった。嗅覚の歌にいい歌がよかった。

・頬杖をつくとき今朝のささがきの牛蒡が香るわれのてのひら

・霧雨をくぐりて帰るわが少女はつかに鮎のにほひを持てり

・豆腐屋に豆腐二丁を買ふあひだわれより高き向日葵見をり

・風の中ただ立つのみの青桐がひそかにわれのけふを支へつ

・「あ、芹。」と言ひて食みたり彼の日よりほとんど何も語らぬ夫が

 こういう歌を読んでから、尾崎さんは乳癌と闘うことになる。

 そういう知識があるからなのかどうか、尾崎さんの歌は人生のふとした喜びを体ぜんたいでとらえる鋭さに満ちていると思った。

 最後の歌は、ご主人がご病気なったりケガをしたりしたことが「彼の日」。しかし、人生の大小のイベントの、すべての前後に幸せな時間とそうでない時間があるのだろう。

 とすこし、感傷的になったりした。

 真田幸治さんの装丁もすごくいい。

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