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みちのくの農の子。

Photo  品田悦一著『斎藤茂吉』(ミネルヴァ書房)を読む。

 遅ればせながら。

 松村正直さんの「やさしい鮫日記」にも言及があった、話題の本。

 「評伝」ではあるが、万葉学者から見た茂吉の、人生をかけた戦いの解読という側面が特徴。」。

 茂吉の人生は、万葉集に翻弄されたと言ってもいいようだ。

 一介の「みちのくの農の子」だった茂吉が、歴史の流れの中で紛れもない近代人となって、世が世なら背負わずに済んだはずのもろもろの重荷を背負い込み、事と次第によっては演じずに済んだはずの役柄を演じとおしたのであった。

という視点でまとまると、かっこよすぎるかもしれない。

 ハイライトの一つは、1933年以降の戦争において、万葉集がほんの一部(防人の歌のそれも数首など)だけを恣意的に引用されて、国威発揚と徴兵の装置として悪用されてしまったことに対する茂吉の(そしておそらく著者の)怒りであろう。

茂吉が身の危険をも顧みず、戦時下の万葉集称揚を非難してやまなかったのは、

(中略)

自ら信奉し、世間に広めてもきた文化主義的国民歌集が蹂躙されていくという事態を、彼は座視するに堪えなかったからだ。

という文章に収斂されてゆく。

 引用だけではわからないですね。

 超おすすめの一冊。3150円ですが、10倍以上の価値はあります。学者というか、品田さんという人はすごい人ですね。

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コメント

まつむら様。
そのようですね。
人選がすばらしいです。できれば、品川先生の連続講義をお聞きしたいです。
『万葉集の発明』は、中野区の図書館にもありませんでした。

投稿: おおまつ。 | 2011年12月30日 (金) 12時54分

どなたか存じませんが、ありがとうございます。

投稿: おおまつ。 | 2011年12月30日 (金) 12時51分

お誕生日おめでとうございます。

投稿: | 2011年12月30日 (金) 00時10分

12月10日に京都で行われた現代歌人集会の秋季大会に、品田さんをお招きして90分の講演をしていただきました。〈「ありのまま」の底力―ヤスパース・ゴッホ・茂吉―〉という題で、講演もとても良かったです。気さくな方で、すっかりファンになりました。

投稿: まつむらまさなお | 2011年12月29日 (木) 22時25分

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