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太鼓の空間。

0003  明けましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいいたします。

馬場あき子さんの第22歌集『太鼓の空間』(砂子屋書房)をいただく。

 おお、もう第22歌集なのか、という感慨はある。

 だが、読めば読むほど若々しく、軽妙にものごとに本質を突く歌は健在。

 プロの歌として、一首の読みどころがくっきりとしていて、安心して楽しめる。だから22冊目でもまったく飽きないのだ。

 それは、一首の中の〈間〉のようなものでもある。短歌の真髄(単に意味でなく、単に音でなく)の喜びに触れさせてくれるのだ。

 どこにでもある話を、作者の領域内に自然にぐいいと呼び寄せる感じであって、苦労して言葉を搾り出している痕跡を残さない。

 人も小動物も昆虫も、それぞれの生き死ににゆるやかに溶け込む気持ちになる。かすかな笑いとかすかな生きることの翳りを見せつつ、肯定的な(つまり、いつも馬場さんご本人からもらう元気のような)気合いと許しを受け取ることができる感じなのだ。

 どれを引いてもすごい。ああ、短歌の列につながっていてよかったなあと思わせてくれる馬場さんである。

・朝の鏡に真剣におのれを見ることもなくなりて怱忙のひとひはじまる

・さまざまな駅の時間の中にある昼のカレーのほのかなあはれ

・隠岐びとはしやもじ手にして踊るなりきんにやもんにやといふよろこびを

・少しもがいて死ぬ冬の蜂しはしはとまゆみの落葉はふりかくせり

・柳葉にしがみて揺れる蝉殻の中に風ありかすかなるかな

・乱れ菊明るき午後を父なくて母なくてなぜにこころ安らぐ

・まつしろに化粧をすればつくづくとじゆごんのやうなをんなのわたし

・父の背に眠りゐし吾の深処(ふかんど)の記憶にひびき獅子の笛鳴る

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