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水木。

0002_2   午後、新宿住友ビルへ。

 朝日カルチャーセンターの講座。高野公彦『水木』(実質的な第一歌集)を取り上げる。

 12冊の歌集の中で、改めて位置づけしようとすると、特徴的な(特殊なとも言える)一冊となるだろう。

 その後の高野短歌の原型を示しながらも、コトバや命そのものへのこだわりが表だっていない。

 その代わり、地道に事物のもつ短い時間内の輝きをしっかりととらえ、本質を見出そうとするレッスンがなされている感じがする。

Photo  それ自体でも完成度は高いが、のちにさらにスケールアップしているのを感じる歌も多い。例えば、

・悲しみを書きてくるめし紙きれが夜ふけ花のごと開きをるなり

からは「少年のわが身熱(しんねつ)をかなしむにあんずの花は夜も咲(ひら)きをり」 『汽水の光』 を、

・飛込台はなれて空(くう)にうかびたるそのたまゆらを暗し裸体は

からは、「ふかぶかとあげひばり容れ淡青(たんじやう)の空は暗きまで光の器」『淡青』 を思い出す。また、

・夕冷えの公孫樹(いちやう)を抱けば幹の中あなしづかなる滝くだりをり

から、「雪の夜のコップの中におほぞらのありてかすかに鳥渡ゆく」 『水苑』 を想起するだろう。

 という単純な話だけではなく、60年安保と70年安保に挟まれた時代の、少し遅く大学生活をスタートした男性の懊悩と鬱屈と熱い思いなどが溢れている。それを隠さず短歌にぶっつけているところ、やはり、特殊な歌集と言って良いかもしれない。

 後半の4つの連作も研究してみると、もっといろいろ出てくるような気もする。

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